窒化物MOVPE成長 反応データベース

窒化物半導体の MOVPE 成長に関する反応データベースを提供します。
本データベースには、GaN, AlN, AlGaN, InGaN 成長の反応モデルおよび、MOVPE 装置における熱解析に関するデータが含まれます。
MOVPE プロセスにおける結晶の成長速度や組成分布の解析、またその均一性の解析においては、装置内の温度場や流れ場の解析だけでは予測が難しく、信頼できる反応モデルを使用した解析が必要です。この反応モデルには、東京理科大学 応用物理学科 大川 和宏教授(現 professor at King Abdullah University of Science and Technology (KAUST), Saudi Arabia) が、長年、商用の流体ソフトウェアを使用し行ってきた結晶成長解析で得られた知見が集約されています。特に、考えられる全ての反応プロセスや化学種を考慮しつつ、実験において得られた成長速度や分布、組成などと検証を進めながら完成された反応モデルであることが、信頼できる反応モデルであることを示しています。また、反応データは、修正アレニウスを含むアレニウス形式の数値データとして提供しておりますので、アレニウス形式のデータが読み込めるすべてのソフトウェアに対して使用することが可能です。
データベース概要
ページの先頭に戻る
データベースには、GaN, AlN, AlGaN, InGaN 成長の反応モデル、および、MOVPE 装置における熱解析に関するデータが含まれます。
MOVPE成長 反応モデル
- GaN 成長(TMGa/NH3/H2系)
- AlN 成長(TMAl/NH3/H2系)
- AlGaN 成長(TMAl/TMGa/NH3/H2系)
- InN および InGaN 成長(TMIn/TMGa/NH3/N2/H2系)
反応解析に必要な、気相反応式、表面反応式、分子種の物性データが含まれています。
反応モデルは、フルスペック/スタンダードの2種類から選択できます。
フルスペックモデル: |
考えられる全ての反応プロセスや化学種を考慮した反応モデルです。 1つの反応モデルで幅広い条件・装置における MOVPE 成長解析を行うことができます。特に、装置開発や成長条件の改善等を目標としたシミュレーションにおいて有効なモデルです。 |
スタンダードモデル: |
代表的な成長条件範囲において使用できる反応モデルです。使用する反応数や分子種数が限られるため、フルスペックモデルの 1/10 の計算時間で成長解析を行うことができます。時間をかけずに成長条件の検討を行いたい、また、成長の大まかな傾向(温度分布や流れ場の様子、成長速度分布)を把握したいという要望に対応します。 |
熱解析データ
石英および、サファイアの室温および 800 ℃における熱放射・吸収に関する実測光学データを提供します。その他、接触抵抗値や、使用している材料物性データを提供します。
提供方法
ページの先頭に戻る
解析内容に合わせたデータセットを提供致します。AlGaN および InGaN 成長向けのデータセットでは、それらに含まれる GaN, AlN, InN 単体の成長解析も同時に可能です。
データセットは、冊子での提供となります。MOVPE 成長解析において実績のある、CFD-ACE+ 上でのご利用においては、専用のデータベース形式*でご提供できますので、すぐに解析に用いることができます。

*CFD-ACE+ データベースマネージャー内に
反応式や速度定数の情報を取り込み可能
利用方法
ページの先頭に戻る
上記データセットに含まれるデータは、一般的な流体ソフトウェアにおける入力項目をベースとしています。
MOVPE成長 反応モデル
反応モデルデータに含まれるパラメータリストは以下です。
- 気相反応
- 反応式 (第三体が関与する反応式も含む)
- アレニウス型速度定数 (頻度因子、温度指数、活性化エネルギー)
- 表面反応
- 表面サイト (表面サイト濃度など)
- 反応式 (表面吸着分子種が関与する反応式を含む)
- アレニウス型速度定数 (頻度因子、温度指数、活性化エネルギー)
- 分子種データ
- 気相分子種 (分子量、Lennard Jones ポテンシャル、JANNAF係数)
- 表面吸着分子種 (分子量、JANNAF係数)
- バルク(結晶を示す固相)種 (分子量、密度)
熱解析データ
熱解析データのパラメータリストは以下です。
- 材料物性
- 密度・比熱・熱伝導率
- 波長依存のふく射率(放射率)
- 波長依存の吸収係数
- 接触熱抵抗(基板/トレイ間, トレイ/サセプタ間)
- ギャップ
- 有効熱伝導率又は、熱抵抗値
- 波長依存のふく射率(放射率)
その他、以下の様な物性データや現象を取扱っています。
- 熱ふく射・熱伝導・熱伝達を含む熱の輸送と流れ場の計算
- 濃度又は質量分率ベースでの濃度拡散・熱拡散を含む多成分系の輸送現象
- 気体分子運動論に基づく混合ガスの粘性係数、熱伝導率、拡散係数、熱拡散係数の取扱い
- JANNAF 形式に基づく熱力学データ(比熱、エンタルピー、エントロピー)の取扱い
他の熱流体及び、化学反応向けシミュレーションソフトウェアでの使用においては、
少なくとも上記のパラメータや、物性データ、現象の取扱いが必要となります。
公表論文
ページの先頭に戻る
以下に、大川教授による公表論文の一部を掲載します。論文に記載されている解析パラメータはほんの一部です。上記データベースから、これらの解析に必要な反応モデル及び分子種データ、熱解析データを入手することが出来ます。
- "Effect of thermal radiation and absorption in GaN-MOVPE growth modeling on temperature distribution and chemical state", A. Hirako, K. Ohkawa, Journal of Crystal Growth 276, 57-63 (2005).
- "Modeling of Reaction Pathways of GaN Growth by Metalorganic Vapor-Phase Epitaxy Using TMGa/NH3/H2 System: A Computational Fluid Dynamics Simulation Study", A. Hirako, K. Kusakabe, K. Ohkawa, Japanese Journal of Applied Physics 44, 874-879 (2005).
- "GaN-MOVPE 成長における化学反応経路の熱流体計算解析 −TMGa/NH3/H2 系での化学反応について−", 平子晃, 小磯沙織, 草部一秀, 大川和宏, 信学技報 105巻 90号, pp.85-89 (2005).
- "Influence of polymer formation on metalorganic vapor-phase epitaxial growth of AlN", T. Uchida, K. Kusakabe, K. Ohkawa, Journal of Crystal Growth 304, 133-140 (2007).
- "交互供給 AlN-MOVPE 成長における気相種の熱化学流体解析", 中村健一, 平子晃, 大川和宏, 日本材料学会半導体エレクトロニクス部門, 平成21年度第1回研究会 (2009).
- "MOVPE 成長 InGaN 系 LED の長波長化", 大川和宏, 日本学術振興会 ワイドギャップ半導体光・電子デバイス第162委員会/第75回研究会資料 pp.40-45 (2011).
- "740-nm emission from InGaN-based LEDs on c-plane sapphire substrates by MOVPE", K. Ohkawa, T. Watanabe, M. Sakamoto, A. Hirako, M. Deura, Journal of Crystal Growth 343, 13-16 (2012).
ページの先頭に戻る