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GaN 成長モデル(フルスペックモデル)は、以下の現象の解析に展開できます。
図1 に GaN 気相反応機構の一部を示します。図のように、炭素源は TMGa およびアダクトなどの熱分解プロセス中に発生する CH4, CH3 としています。この CH3 は結晶表面に吸着することで、Ga の吸着種との間で GaC を形成し、不純物として炭素が結晶に取り込まれます。
この反応モデルを使用し、炭素取り込み量の温度依存性を解析しました。
計算対象は成長実験で使用されている水平型反応炉とし、図2 のように2次元でモデル化しています。また、成長条件は、図中に記載しています。反応モデルは、図1 で示される炭素取り込みを考慮したフルスペックの GaN 成長反応モデルを用いています。また、精度の高い炉内の温度分布を得るために、熱解析データに含まれる波長依存の光学物性および、基板/トレイ、トレイ/サセプタにおける接触熱抵抗を考慮しています。
1000〜1070 ℃の範囲において成長温度を変化させた時の、炭素濃度の計算結果を図3 (青線)に示します。比較検討に用いた実測データは、図中に示した文献より取得しています。成長温度の上昇に伴う、炭素濃度の減少傾向が再現されています。計算結果は、温度上昇に伴って促進される、成長表面に吸着した CH3 の離脱が炭素濃度を決めるポイントであることを示唆しました。
本計算は、c面サファイアを仮定して行っています。面方位は、成長モードに影響し、炭素の取り込みが異なる可能性があります。この点は、今後の課題となっています。
現在、大気圧以上の条件でのMOVPE成長はボイラー法により制限されています。このような状況でも、100 kPa以上の圧力における成長解析を計算によって検討できます。
計算対象は成長実験で使用されている水平型反応炉とし、図4 のように2次元でモデル化しています。成長条件は、図中に記載しています。反応モデルは、フルスペックの GaN 成長反応モデルを用い、また圧力の変化による流れ場の変化が、温度分布に与える影響も同時に考慮するため、熱解析データを用いています。
計算結果のうち、低圧から加圧条件における GaN 成長速度および、成長速度分布のの変化をご紹介します。
成長圧力 40 kPa 以下では、GaN 成長速度が微減します。また、100 kPa 以上でも GaN 成長速度の減少することが予測されます。しかしながら、加圧することにより、成長膜の均一性に若干の改善がみられます。