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第5回:保全業務を遂行するために必要な機能

第5回:保全業務を遂行するために必要な機能

保全管理システムを導入する際に問題となる ROI (投資利益率) や既存システムとの関係性などを検討するための判断材料として、保全管理システムに必要な機能を目的別に紹介します。
2009-01-14

保全管理システムを導入する際には、ROI (投資利益率) を最大化するべく、余計なシステムは入れずに、必要最低限の機能を備えるのがベストです。今回はその点を踏まえ、設備のメンテナンス作業を管理する際に必要となる具体的な機能について説明します。

基本概念

まず、必要最低限の機能を以下に示します。メンテナンス業務は最低限、設備を特定する情報と、この設備に対する作業を記録できる仕組みがあれば管理することができます(図1)。作業には、計画的な作業、事後保全を記録します。


図1: 設備のメンテナンス作業の管理

Microsoft® Excel 等のスプレッドシートを用いて管理する場合 (保全カレンダ) も、これに相当します。


図2: 保全カレンダの例

これらの機能に加え、定期的に実施する作業や検査に関する記録を生成する仕組み(一般的には、予防保全の名称で呼ばれる作業のテンプレート)と予備品(交換部品)に係る機能を用意することで、保全管理システムで最も基本的な情報の管理が可能となります。


図3: 保全管理システムの基本情報

作業に記録する情報として、担当者(ベンダー)や費用に係る情報、交換部品に係る費用、故障に対する処置の記録等が含まれます。保全カレンダで参照すると以下の様になります。(図4)


図4: 作業に付随する情報の記録イメージ

定期的に実施する作業の情報、予備品に係る情報を用意することで、計画策定とその調整の簡単化、計画化漏れの軽減が期待されます。また、保全カレンダを介して参照することで、作業の全体像の可視化が可能となります。

設備に係るメンテナンス作業や履歴の管理としては、以上の機能で十分です。 しかし、実際の作業では、作業依頼の一元化と承認、予備品の入出庫(在庫管理)、作業のアウトソース、購入品の管理、モニター機器(DCS等)との連携等、保全業務に関連する作業や機能が数多く存在します。情報の一元管理、作業の標準化および効率化のためには、これらの機能を、保有することが望ましいが、費用と効果との兼ね合いで決まります(ROIの考慮)。特に、昨今では、メンテナンスコストおよび内容の最適化の観点から状態ベース保全(CBM)に向かうケースが多く、何れの機能を入れるかが、保全部門でのテーマとなっています。

その他の機能一覧

では、上記の基本機能以外にどの様な機能があるのか、以下に示します。


図5: 保全管理システムを取り巻く機能

顧客
顧客の資産に対してメンテナンスサービスを提供する場合、保全管理システム由来の顧客管理が必要になります。顧客を切り口にすることで、顧客に対するサービスの提供状況やクレームの処置状況が見える様になります。
検査・モニタリング
CBMを実現するために、検査結果の取込みやモニタリングシステムとの連携が必要になります。保全管理システムの基本機能導入後は、検査やモニタリング情報をどの様に連携するかが重要なテーマとなります。
作業依頼
設備管理、CBMを効果的に進めるためには、設備利用者からの要求の段階からシステム化していく必要があります。モニタリング装置連携の前に依頼を取り込む仕組みを用意しておくと効果的です。
設備
設備台帳は、目的に応じて、どの粒度で台帳を作成するかが重要なテーマとなります。台帳に記載される内容により、実施している保全の内容が判る位、重要なものです。タグ、S/N(Asset)、ロケーション、機種、管理区分、設備階層等の設備区分の決定が重要です。また、設備の仕様、関連予備品や関連図書をどの様に関連付けるかも重要な検討項目になります。
部品
部品カタログです。予備品や交換部品用に一覧を持つと、計画、実績報告が簡便になります。部品は、在庫管理と併せて、ERPの一機能とも考えられますが、保全管理システムに(予備品のみでも)持つことにより、交換計画の作成が簡便になります。
作業
設備に対する作業を記録します。故障情報については、処置内容を作業として記録する場合と、故障情報を別途、記録する場合が考えられます。設備履歴を分析することを考えると、故障に対する処置として記録する方が集計しやすくなります。また、作業そのものを、後で分析することを考える場合、ひとつの設備に対してひとつの作業記録にすると集計がしやすくなります。一括作業等の様に複数の設備や作業をまとめる場合は、作業をグループ化できる機能が存在すると、使いやすくなります。
計画:予防保全
作業のテンプレートを作成できる機能が存在することで、標準化を進めることができます。周期を持ち、時期が来たら作業に展開できる機能を持つことで、計画化の漏れが回避できます。
作業員:リソース管理
設備の担当者や作業の責任者、ベンダー等、リソースを意識した計画を立てることを可能とするために、リソースの割当機能があると便利です。昨今では、ガントチャート方式のスケジューラとの連携機能を持ち、リソースの山済み、山崩しを可能にしているシステムも存在します。また、資格と併用することにより、人員の配置が簡便になります。
工事管理
作業記録を、ひとつの設備に対するひとつの作業単位の管理として考える場合、同一時期、同一設備や発注単位で作業をまとめる必要があります。プロジェクト管理のために作業をグループ化する機能が必要です。
積算
保全管理システムで、設備のメンテナンス履歴を管理することが主目的となる場合、発注単位で作業およびコストをまとめる、または、調整する機能が必要になります。本作業を積算と呼びます。保全管理システムに積算機能を用意することで、設備に対する作業と発注単位のマッピングが可能となります。
モバイル
存在すると便利な機能としてモバイルがあります。モバイルへの連携もしくは、モバイル機能そのものを持つことにより、作業報告の簡便化を図ることができます。
EUC
保全管理システムは、データベースシステムです。情報を一元管理することは、得意ですが、色々な角度からの分析や管理帳票を利用したい場合、都度、機能を作成(または準備)する必要があります。一元管理された情報を、スプレッドシートにダウンロードできる機能を用意することで、エンドユーザが自由に加工できる様になります。
外部インターフェース
業務の全てをひとつの保全管理システムで管理するのは、現実的ではありません。例えば、在庫管理は、既に利用中のシステムを使いたい等の要求が発生します。この時、外部インターフェースが有効なツールとなります。外部インターフェース機能には、データベース経由で行うもの、インターフェース・モジュールを介するものがあります。データベースを介するものが簡単で使い勝手が良いですが、データの整合性を保証するための仕組みや仕掛けが必要となります。
在庫管理
在庫管理は、殆どの企業で何らかの仕組みを持っています。保全管理システムの在庫管理システムを利用する場合、作業用画面から直接、予約や出庫記録等ができる利便性(リアルタイム性)が期待できます。別途、在庫管理システムを持つ場合、リアルタイム性や作業からの直接指示がどこまで必要かを考え、何れを利用するかを決定する必要があります。殆どの場合は、作業にて入力した予備品利用計画(いつ、誰が(何の作業で)、何が、どれだけ必要)を出力でき、在庫管理部門に提示できれる機能が存在すれば、費用の二重投資を回避することができます。
購入依頼
安全在庫や再発注点管理にて自動的に購入依頼を作成する必要がある場合や、作業にて直接購入品を依頼したい場合に有効です。
在庫トランザクション
在庫管理を行うためには、トランザクションに関する記録を正しく行う必要があります。
発注依頼
作業画面から直接、発注依頼を出したい場合に有効です。例えば、作業をアウトソースする場合、作業計画を作成し、同じ画面で、発注依頼が作成できれば利便性が高まります。作業計画時に帳票として出力することで代用できます。
見積依頼
作業画面から直接、見積依頼を出したい場合に有効です。例えば、作業をアウトソースする場合、作業計画を作成し、同じ画面で、見積依頼が作成できれば利便性が高まります。作業計画時に帳票として出力することで代用できます。
発注
発注管理は、購買機能の一機能であり、殆どの企業では、別途、システムを持っています。
請求書
請求書は、発注書に対する請求書を管理する機能であり、殆どの企業では、別途、システムを持っています。

まとめ

今回は、保全管理システムとして必要と思われる機能を列挙しました。商用のシステムでは、在庫管理や購買管理機能を具備するものも少なくありません。ところが、これらの機能は、既に、導入され利用している場合が多く、これらとの連携をどうするかが重要な検討項目となります。費用の二重投資は避けたいが利便性は追求したい場合についてROIを検討しながらシステム化の範囲を決める必要があります。