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 窒化物MOVPE成長 反応データベース
MOVPE

InGaN 成長(フルスペックモデル)の活用事例

 公表論文 (本事例紹介の内容は、下記の論文より引用しています。)

InGaN 成長モデル(フルスペックモデル)を利用した解析が、長波長赤色 LED の作製に貢献した事例を紹介します。

1. 常圧 MOVPE で赤色 LED を実現

図1 に大川研究室にて実現された、 20 mA 駆動時において 741 nm のピーク波長とする赤色 LED を紹介します。成長温度を 785℃とした常圧 MOVPE により赤色 LED を実現しました。
 長波長の LED の実現には、高 In 組成かつ、高品質な InGaN 薄膜の成長が不可欠です。InN の融点における窒素の平衡蒸気圧は、GaN や AlN の場合と比較して 2桁以上高いため、InGaN の熱分解を防ぐためには成長温度を下げる必要があります。しかし、成長温度を上げられれば V 族原料であるアンモニアの分解効率が向上します。更に、原子のマイグレーションも向上し、高品質な InGaN 結晶となることが期待できます。そこで、MOVPE 成長プロセスの再考を行うために、シミュレーションと実験を活用しました。


図1 InGaN/InGaN MQWs LED と断面構造
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2. 計算モデル

 使用データベース:InGaN成長(フルスペック)モデル・熱解析データ
 計算ソルバー:CFD-ACE+

成長実験で使用されている水平型反応炉を、図2 のように2次元でモデル化し計算に用いています。上記の目的を達成するために、リアクター内部の高さに着目し、7.5 mm と 5 mm の2つの高さを検討します。成長条件は、図中に記載しています。成長温度は 785 ℃ です。


図2 2次元水平型反応炉モデル
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3. 基板表面付近の In, NH2 濃度の計算結果

図3 に着目した In 原子濃度と NH2 分解種濃度の計算結果を示します。基板面中心付近の表面から 2 mm の空間における各化学種の濃度分布を示しています。原料ガスの供給量は同一でありながら、高さを 7.5 mm から 5 mm に変更すると、基板表面付近における In 原子濃度は、27 %、NH2 濃度は、20 % アップすることが確認されました。リアクター高さを 5 mm とすることで、成長温度を 785 ℃に保ちながら、In 組成を高められることが示唆されました。


図3 リアクター内高さ 5 mm(赤線)と 7.5 mm(黒線)の場合における
(a) In 原子濃度の基板表面からの分布および、(b)分解種である NH2 の濃度分布
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4. 成長温度と LED の EL 発光ピーク波長

InGaN は、成長温度がそのまま組成に反映され、発光波長に影響します。先のシミュレーションで得られた傾向を確認するために、実際に LED を作製し、成長温度と発光波長を確認しました。図2 で示された2種類のリアクターにおいて成長温度 760〜820 ℃の範囲で成長させた InGaN/(In)GaN 超格子を活性層とする LED を作製し、得られた EL 発光波長と成長温度との関係を 図4 に纏めています。
 リアクター高さを狭窄することで、同一温度でありながら、発光波長を 100 nm ほど長波長化することができることが確認されました。


図4 InGaN 層の成長温度と LED の EL 発光ピーク波長
[1] P. T. Barletta, et al, Appl. Phys. Lett. 90, 151109 (2007).
[2] Y. Yamashita, et al, Jpn. J. Appl. Phys. 42, 4197 (2003).
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