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1、ベイズ最適化による計算条件決定

Materials Studioのようなシュミレーションツールは、材料開発などに対する強力な武器として広く用いられています。
例えば、物性シュミレーションを行うことで将来において有効な新規材料の模索に使われています。
しかし、一つの計算に対してかなりの時間がかかることから、パラメーターの調整が重要となります。
パラメーター候補の選出として、「ひらめき」、「今までの経験」などの不明慮な考えや、「グリッドサーチ」のような総当たりを用いていては時間が何倍もかかると思われます。

そのような問題の対策として、「ベイズ最適化」が近年において提案されています。
ベイズ最適化の報告例としては、強磁性成膜の成長条件最適化があります (Y. K. Wakabayashi,et.al.,APL Materials 7, 101114 (2019).)。 そこで本シュミレーションでは、同じく「ベイズ最適化」の計算事例としてスピン磁気モーメントの計算条件を選定を行いました。


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  • グリッドサーチ:一番効果的なパラメーターの値を決定する際、全てのパラメーターの組み合わせを試す手法を指します。

  • ベイズ最適化:Black-box関数の最適化に対する強力な手法であり、効率よく最適解を求めることができます。
  • 2、計算対象やベイズ最適化の概念

    計算対象はMaterials Studioを用いて作成したNi、目的変数はそのNiのスピン磁気モーメント、説明変数はスピン磁気モーメントに大きく影響する温度と圧力としています。
    スピン磁気モーメントが強い値をとる温度と圧力を、ベイズ最適化を用いて計算しています。
    また、スピン磁気モーメントそのものはMaterials Studioを用いて計算しています。

    最初に計算対象のNiの構造をMaterials Studioで作成(Niの構造はテンプレートに入っています)します。
    その構造に対して、自分が定めた計算開始条件でシュミレートします。
    シュミレートすることにより帰ってきた値(スピン磁気モーメント)をもとに、次に最適な値をとる可能性のある値(温度と圧力)が返ります。
    その帰ってきた値(温度と圧力)を用いて、同様にシュミレートを行います。
    このサイクルを自動化したものをベイズ最適化と呼びます(右画像)。


    3、計算結果

    計算の試行回数ごとのプロットを右に示します。

    本計算では、サイクル数はわずか20サイクルで、適正であるパラメーターを提案しています。

    仮にパラメーターを求める際にグリッドサーチ(総当たり)を用いた場合、ベイズ最適化では求めていない部分(例えば、右散布図内の左上や右下が当てはまります)に対しても時間と労力を割くと考えられます。
    このことから、ベイズ最適化はこれから多くのパラメーターの適正値を求める際に、重要なスキルになると考えられます。